〈右手と弓の使い方・バイオリンの演奏テクニック〉

スピッカート(spiccato)/ソティエ(Sautille)/跳弓(ちょうきゅう)の弾き方と練習方法

弓を跳ねさせて演奏するスピッカート・跳弓の弾き方

遅いスピッカート

少し速いスピッカート

速いスピッカート

スピッカートの練習手順1 デターシェからスピッカートへ

  1. 弓重心より弓中付近でデターシェを繰り返し、徐々に弾く距離を短くして速度を上げていきます。肘の関節をつかって前腕を動かす運動から、徐々に手首の関節をつかった手首から先の動きでデターシェするようにする変えていきます。
  2. 次に、普通にデターシェを弾いている時よりも、少しだけ弓を持つ指の力を少し抜いて、弓の動きを自由にしてあげます。これは、弓が自分から跳ねるように抑えを解いてあげるようにしているのです。
  3. そして、手首の運動を横方向から、縦方向へ少し意識するようにします。あくまでも少しだけ、「力を加え方の意識」を変えるだけです。少し縦方向の手首の動きが加わることで、人差し指を伝って弓に圧がトントンとリズミカルに加わり、弓が跳ねるきっかけを作ってあげます。

スピッカートの練習手順2 トレモロからスピッカートへ

  1. 弓先側でトレモロしているときは、小指や薬指には殆ど力を乗せずに軽く弾いています。指から弓への力加減をそのままにして、弓の重心付近の良く弓が跳ねる場所に弾く場所を移動させると、弓に抑えが効いていないので弓が勝手に跳ねる(と言うより、弓が暴れる)ようになります。
  2. 跳ねてきたら、指から弓へ加えている力を少しづつ増やして弓の跳ね方を抑えるようにします。

動画解説

補足解説

遅いスピッカートで演奏する例
譜面

遅いスピッカートで演奏する所の例として、エア・バリエ パチーニの主題による (C.Dancla op.89,No.1)を取り上げてみます。ここは譜面にはスタッカートの記号はなく、八分音符と八分休符のペアが繰り返してあって、弓順の記号としてはダウン記号が八分音符に連続して入っています。演奏表現を考えると奏法としては遅いスピッカートで弾くのがふさわしい場所になります。

スピッカートの練習をする時の注意

スピッカートの練習する時に注意したい事は、開放弦でジャカジャカ弾き続ける練習をするのではなく、音の粒を意識して、音を幾つ弾いたかを把握しながら練習するように心がける事です。

たとえば、16分音符で、レ、ミ、ファ#、ソの音階でスピッカートの練習をします。この時、弾きながら拍の頭をしっかり感じるようにします。弓をただ跳ねさせるのではなく、弓の動きをコントロールして跳んでいる状態をしっかり把握するように注意を向けます。

スピッカートが上手く跳ばない方へ

動画の中で(このページの上の方の解説のまとめでも)スピッカートにもっていく練習方法を二種類紹介しました。練習手順1は、しっかりデターシェで弾きながら右手の力を開放していく方法で、練習方法2は、手の力が抜けた状態から徐々に抑えを加えていってコントロールする方法と、ちょうど反対方向からのアプローチです。

練習手順2の方が、跳ばす状態にもっていきやすいと感じる方が多いようですが、なかなか、響きの良いスピッカートにまで完成させるのが難しいようです。反対に、練習方法1は、力を抜いていくという行為が難しいためか跳ばしにくいと感じる方が多いようです。しかし、できあがったスピッカートの音質は芯のある響きの良いものになると思います。

動画解説の中で、芯のある響きの「良いスピッカート」と、ガサガサした「悪いスピッカート」を弾き比べましたが、注意して聞かないと分かり難いかもしれません。悪いスピッカートは、ひっかくような耳障りな高い音が多く混ざっています。

自分の状態を確認して、あるいは自分が求めている音質によって、練習方法を適当に選んでみて下さい。

スピッカートの練習曲としてカイザー19番(Kayser 36 etudes No.19)お勧めです
楽譜

動画で解説してる箇所の楽譜です。はじめは、Allegro vivace より遅くして練習しましょう。