〈右手と弓の使い方・バイオリンの演奏テクニック〉
リコシェ(ricochet)/リコシェ・サルタート(ricochet saltato)/跳ばすスラースタッカート(flying staccato)の弾き方と練習方法
弓を跳ばしながらスラースタッカートする奏法です
- 弓を跳ねさせながらダウンへスラーさせて音を短くつなげて弾く演奏方法で、リコシェとか、リコシェ・サルタート、とも呼ぶことがあります。また、サルタンド(saltando)もサルタート(saltato)と同じイタリア語で「跳ねる」の意味です。
- 教本でも定番の「ゴセックのガボット」で出てくる演奏方法です。ゴセックのガボットに出てくる跳ばすスラースタッカートは、途中に移弦がある4つの音をしっかり弓のバウンドに合わせて弾く必要があるので難しい部類に入ると思います。
リコシェ/リコシェ・サルタート/跳ばすスタッカートの練習手順
- 弓を跳ねさせながらスラーする事自体は、そもそも弓はよく跳ねるものなので、みなさん比較的簡単にできるようになります。難しいのは、跳ねやすい弓をコントロールしながら楽器が響くようにしっかり弾くようにする事です。弓に勝手に跳ねさせていると楽器が響かなくてガサガサした音になってしまいます。しっかり楽器が響く弾き方ができるように練習手順を解説します。
- まずは、弓の跳ねをコントロールしながら弾く感覚を掴むために、弓が跳ねにくい弓元に近い所をつかって音を4つつなげる練習をします。弓元は、弓があまり弾まないので、手首の動きを使って弓をバウンドさせる必要があります。ここで、しっかり弦を弓で弾いて楽器を鳴らしながらスラースタッカートする感触と、手首と指の力加減を確認してください。
- 次に、弓中の良く跳ねる部分で弾くようにしてみます。弓元で弾いていた時よりも、弓を持つ指の力を少しだけ抜いて、弓を少しだけ自由にしてあげます。すると、弓がかなり跳ねてくるのが分かると思います。しかし、ここで弓に好き放題に跳ねさせないで、手首と指で弓の跳ねを抑えるように意識して、弦を「ちゃんと弾く」ように注意します。弓元での練習の感覚を思い出すとよいでしょう。
- 移弦の動作を入れます。E線とA線でそれぞれ16分音符4つを、E線とA線を交互にダウンでひきます。右手の肘の位置を移弦に伴ってしっかり変えるように注意します。
- つぎに、肘の位置に注意しながら、16音符4つのダウンを、E線2つ、A線2つ、一弓で弾きます。さらに、E線3つ、A線1つ、を弾きます。跳ねる弓の状態をしっかり把握できるように、左手もあわせてみます。
跳ばす分散和音(アルペジオ)(Flying Arrpegio)の練習手順
- 跳ばすスラースタッカートは、分散和音(アルペジオ)を跳ばしながら弾くこともあります。メンデルスゾーンのコンチェルト、カデンツァが良い例です。アルペジオを飛ばして弾く練習手順を説明します。
- まず、4つの弦を同程度の弓の量で均質に、少ない弓で弾く練習をします。真ん中の2本の弦(D線、A線)の音が短くなるなどいい加減にならないように注意します。
- 4音のアルペジオができたら、下の音(G線)と上の音(E線)をしっかり弾くように意識を向けます。まずは、4つの弦を均等に弾けるようにして、それが確認できたら、G線とE線の2音をしっかり弾くように練習を進めた方が、奇麗な響きをつくることができます。
- 最後に、弓を跳ねさせるきっかけをつくります。ダウンでG線を引く時に、右手を下の方へ叩きつけるようなイメージでG線に圧を瞬間的にかけます。すると、弓がバネの力で跳ねかえってきますので、小さなバウンドをつくることができます。
動画解説 リコシェ(ricochet)/リコシェ・サルタート(ricochet saltato)
動画解説 跳ばすスラースタッカート(flying staccato)
補足解説
分散和音(アルペジオ)
和音を同時に弾くのではなく、1音1音分けて時間差をつけて弾くことをアルペジオと言います。日本語では「分散和音」といいます。